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カタログは22cm四方。うちは20cm四方。── xTool F1 Ultra でできることと、現場で2cm削った理由
技術解説12分で読める2026-10-01

カタログは22cm四方。うちは20cm四方。── xTool F1 Ultra でできることと、現場で2cm削った理由

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レーザー彫刻アーティスト

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10月になりました。おかげさまで、新しいお問い合わせも、また頼んでくださるお客様も増えて、にぎやかな毎日を過ごしています。今回は工房の主力機 xTool F1 Ultra が公式にできること(数値は公式サイトのまま)と、実際に使ってみて縮めた「2cm」の話。あわせて、ここ数か月で急に増えた刻印のご依頼ランキングも発表します。1位、ちょっと意外かもしれません。

10月になりました。

おかげさまで、はじめましてのお問い合わせも、「またお願いします」と戻ってきてくださるお客様も増えて、ありがたいことに、ばたばたと手を動かす毎日を過ごしております。いつも本当にありがとうございます。

今回は、少し長めに書きます。前半は工房の主力機の話、後半はここ数か月のご依頼ランキングです。ランキングの1位、たぶん当たらないと思います。

まず、うちの機械の話から

工房の主力は xTool F1 Ultra という卓上のレーザー機です。見た目はそんなに大きくありません。デスクの上に置ける箱です。ただ、中身はなかなか面白いことになっています。

まず、ここから並べる数値は、全部メーカー(xTool)の公式サイトと公式サポートに書かれているものです。私が測った数字ではありません。あとで出てくる「うちの現場の話」とは、はっきり分けて書きます。

xTool F1 Ultra(公式の数値)

  • ・レーザーが2本:20W のファイバーレーザーと、20W のダイオードレーザー
  • ・加工できる範囲:220×220mm(別売りのコンベアを付けると 220×500mm まで)
  • ・最高速度:10,000mm/s
  • ・光の点の大きさ:ファイバー 0.03×0.03mm/ダイオード 0.08×0.1mm
  • ・置ける物の高さ:145mm まで
  • ・金属を切る:真鍮 0.4mm/ステンレス 0.3mm/アルミ 0.2mm(高速で何度もなぞって切る方式)
  • ・木やアクリルを切る:バスウッド 12mm/黒アクリル 12mm まで
  • ・位置合わせ用に、1,600万画素のカメラを2つ搭載

出典:xTool 公式サイトおよび公式サポートの記載(2026年10月時点)

数字だけ見ても、たぶんピンと来ないと思います。順番にほどいていきます。

レーザーが2本あるって、どういうこと?

この機械のいちばんの特徴は、性格の違うレーザーが2本入っていることです。

ファイバーレーザー(20W)

金属の担当です。ステンレス、真鍮、アルミ、チタン。光の点が 0.03mm 角と細いので、小さい文字やこまかい線がつぶれにくい。名刺や銘板で主に働いているのはこちらです。

ダイオードレーザー(20W)

木や革、アクリルの担当です。点は少し太めですが、そのぶん面を焼く力がある。木材プレートの焼き色や、革の押したような跡は、こちらの仕事です。

以前は「金属の日」と「木の日」で機械を入れ替える手間が要りました。いまは同じ箱の中で切り替わるので、金属のプレートを彫った次の10分で、木のプレートに取りかかれる。地味ですが、これが一番ありがたい。少ない数のご依頼を気軽にお受けできているのは、ほぼこの1点のおかげです。

ここからが本題。カタログは22cm四方、うちは20cm四方

公式の数値では、加工できる範囲は 220×220mm。22cm 四方です。

でも、うちが設計のときに使う範囲は 200×200mm。20cm 四方です。わざと、ひとまわり小さく縮めています。

端まで使うと、四隅のあたりがどうしてもかすれる。
だったら、最初から使わない。

これは実際に何枚も彫って分かったことです。真ん中はきれいに決まるのに、端に近づくほど線が薄くなったり、濃さがそろわなくなったりする。出力を上げれば端は出ますが、今度は真ん中が焦げます。

理由については、ここからは私の見立てです。機械を分解して確かめたわけではないので、断定はしません。この機械は鏡を振って光の向きを変えるタイプなので、中心から離れるほど光が斜めに当たることになります。斜めに当たれば、同じ強さでも素材に入る力は変わる。端がかすれるのは、そのせいではないかと考えています。

理由がどうであれ、お客様に出す物としては「端がかすれているかもしれない物」を渡すわけにいきません。なので、カタログの数字ではなく、自分が責任を持てる範囲を基準にしています。それが20cm四方でした。

縮めると、何がよくなるか

  • ・仕上がりの濃さが、1枚の中でそろう
  • ・同じデータで2枚目、3枚目を彫っても、同じ顔になる
  • ・彫り直しが減るので、結果としてお待たせする時間が短くなる

道具のカタログ値は「ここまで届きます」という話で、「ここまできれいに出ます」とは別の話なんだと思います。どんな道具でも、使う人が自分の手で線を引き直すところがある。うちの場合、その線が2cmでした。

「最高10,000mm/s」は、速さの話であって、早さの話ではない

公式の最高速度は 10,000mm/s。秒速10メートルです。数字だけ見ると、何でもあっという間に終わりそうに見えます。

実際、光が走っている時間はとても短いです。名刺1枚なら、彫っているのはほんの数分。そこは数字のとおりです。

ただ、ご依頼をいただいてからお渡しするまでの時間は、ほとんどが光が走る前にあります。

1件の中で、時間を使っている順

  1. 1.どう入れるかを決める(文字の大きさ、位置、バランス)
  2. 2.彫るためのデータに作り直す
  3. 3.はじめての素材なら、試し彫りで確かめる
  4. 4.素材を置いて、位置を合わせる
  5. 5.彫る(ここがいちばん短い)

だから「速い機械だから今日中にできますよね?」と言われると、ちょっと困る日もあります。走るのは一瞬。でも、どこをどう走らせるかを決めるのに、いちばん頭を使っています。そこは手を抜きたくないところです。

高さ145mm が効いてくる場面

地味に大きいのが、置ける物の高さが145mmまでというところです。

平らな板しか置けない機械だと、彫れる物は板か、ごく薄い物に限られます。145mm あると、立ったままの物が入ります。タンブラーがそのまま入る。箱物が入る。「これ彫れますか?」と持ってきていただいた物が、だいたいそのまま置ける。この余裕が、お受けできるご依頼の幅をかなり広げてくれています。

ここからランキング:いま伸びている刻印のご依頼

お待たせしました。ここ数か月、工房に届いているご依頼を多い順に並べます。数字の集計というより、毎日手を動かしている体感の順です。そのつもりで読んでください。

第1位

アイコス

まさかの1位です。ここ数か月で、本当に急に増えました。お手持ちの本体をお持ち込みいただいて、お名前やイニシャル、小さなマークを入れるご依頼です。

毎日ポケットに入れて持ち歩く物なので、入れる場所も大きさも、人によってまったく違う。ここに小さく、とおっしゃる方もいれば、思いきり大きく、という方もいます。1件ずつ違うので、こちらも毎回楽しくやらせていただいております。お持ち込みの本体は代わりがありませんから、位置合わせはいつもより念入りに。

第2位

銘板

堂々の2位。機械につける名盤や、ステンレスのプレートです。こちらは以前から変わらず人気があります。

社名、型式、管理番号、連絡先。読めることがすべての仕事です。何年か先に、汚れた手で、暗い場所で見る人がいる。そう思って彫っています。細い線がつぶれないのは、さっきのファイバーレーザーの担当ぶんです。

第3位

タンブラー

贈り物のご依頼が多いです。お名前、日付、ひとこと。渡す相手がはっきりしている物は、打ち合わせの段階から空気が違います。高さがある物なので、145mm がそのまま効いている一品でもあります。

第4位

木材プレート

安定のご依頼、という言葉がいちばん近いです。急に増えもしないし、減りもしない。毎月ちゃんと届きます。表札、看板、お店の小さなサイン。焼けた木のにおいがする日は、だいたいこれを彫っています。

このランキング、並べてみて気づいたこと

4つ並べて、自分でも「なるほど」と思ったことがあります。

1位と3位は自分のために、あるいは誰かに贈るために彫る物。2位と4位は仕事や暮らしの中で、役に立つために彫る物です。きれいに半分ずつ分かれました。

そして、どちらも素材がバラバラです。金属、ステンレス、ステンレスのタンブラー、木。もし機械にレーザーが1本しか入っていなかったら、この4つを同じ週に受けるのはかなり無理がありました。2本あることの意味が、ランキングにそのまま出ている気がします。

「これ、彫れますか?」から始めてください

今回いちばんお伝えしたかったのは、数値そのものではありません。カタログに書いてある「できる」と、お客様にお渡しできる「できた」の間には、ちゃんと距離があるということです。うちはその距離を2cm分、自分で詰めました。

はじめて扱う素材や、はじめてのデザインのときは、同じ品をもうひとつご用意いただいて、試し彫りで確かめてから本番に進みます。確かめずに本番に行って、お客様の大事な物を一つ失うほうが、ずっと怖いからです。

「これ、彫れますか?」のひとことから始めてください。LINEに写真を1枚送っていただければ、それがいちばん早いです。彫れるかどうか、どう入れるときれいか、そこから一緒に考えます。

10月も、どうぞよろしくお願いいたします。

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